知らないうちに詐欺に加担してしまった

詐欺罪コラム

騙した、騙されただけでは詐欺罪は成立しません。

ではどんな場合に詐欺罪が成立するのでしょうか?

この記事では詐欺罪や詐欺罪が成立するための要件を解説した上で、特殊詐欺における「受け子」の詐欺罪についても解説したいと思います。

詐欺罪とは

詐欺罪は、①欺罔行為、②相手方の錯誤、③相手方の錯誤に基づく処分行為、④処分行為に基づく財物(あるいは財産上の利益(たとえばサービス・役務など))の移転という要素が揃うことが必要です。加えて⑤騙す意図(詐欺罪の故意)も必要で、⑤は①欺罔行為か否かの判断にも影響を与えます。

たとえば、当初からお金を払う意思・能力がないAさんが定食店の店員Bさんに対して1500円の定食を注文し、お金を払わず逃げたという無銭飲食を例にとります。この場合、定食を注文するAさんの行為が①欺罔行為、Bさんが「定食を注文した以上、お金を払ってくれるだろう(しかし、現実にはそうではない)」と思うことが②錯誤です。

そして、Bさんが②錯誤に基づき定食を配膳する行為が③処分行為であり、Bさんの③処分行為に基づき④Aさんに財物(定食)が移転しています。そして、Aさんは当初からお金を払う意思がなんかったというのですから⑤騙す意図も認められ、詐欺罪が成立します。なお、当初はお金を払う意図があったにもかかわらず途中でお金のないことに気づき、店員に「後で払う。」などといって嘘を言って逃走した場合も詐欺罪(2項詐欺罪)が成立します。

詐欺罪の規定は以下のとおりです。

刑法246条
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

以下、①から④について簡単に解説します。

①欺罔行為

欺罔行為とは財物(あるいは利益)取得のため相手を騙す行為をいいます。欺罔行為というためには、相手が真実を知っていたならば、錯誤に陥らず処分行為を行っていなかったと認められる程度の重要な事実を偽る必要があります。

②錯誤

錯誤とは被害者が騙されることです。難しくいうと、被害者の認識(定食を提供した以上お金を支払ってもらえる)と現実に発生した事象(定食を提供したのにお金を払ってもらえなかった)とが一致しないことをいいます。

③処分行為、④財物・財産上の利益の移転

処分行為とは、被害者が財物を交付すること、財産上の利益を提供することをいいます。

特殊詐欺の「受け子」と詐欺罪

数年ほど前から特殊詐欺が社会問題化しています。特殊詐欺は組織的に行われることが多く、摘発や組織の解体を免れるため、各人に「かけ子」、「出し子」、「受け子」などの役割が割り振られています。

このうち「受け子」とは、特殊詐欺グループの中で被害者などから直接現金などを受け取る役割を担う者のことをいいます。受け子でやることといえば頼まれたに物を受け取ることぐらいです。にもかかわらず報酬は比較的高いことから、特に、経済的に自立できていない学生、未成年者にとってはこうした仕事が魅力的に映ることでしょう。

他方、仕事を依頼する側からすれば比較的低報酬で危険な仕事を依頼しやすいという事情があります。こうしたお互いの事情が相まって、バイト感覚で受け子の仕事を請け負う学生、未成年者が増えてきています。しかし、受け子は仕事で被害者などと対面するがゆえに、一番の捜査対象となってしまいます。したがって、特殊詐欺グループの中で一番逮捕されやすいのは受け子です。近年は学生、未成年者が特殊詐欺の受け子として逮捕される事例が増えています。

ところで、受け子は詐欺罪の成立要件である①欺罔行為を行ったわけでもありません。行ったことは単に物を受け取ること、つまり、④被害者の処分行為に関与したに過ぎず、詐欺罪の一部にしか関与していないのです。多くの受け子は特殊詐欺グループから詳細を聞かされません。

それゆえ自身が受け子という認識すらないまま「いつの間にか詐欺という犯罪に加担してしまった」という人もいるでしょう。しかし、自身が①欺罔行為を行っておらず一部にしか関与していなくても、あるいは特殊詐欺グループから詳細を聞かされていなくても、何となく「この仕事怪しいな。」という気持ちで受け子の仕事を請け負った場合は詐欺罪に問われる可能性があります。

おわりに

詐欺罪は他の犯罪と比べて立証が難しいと言われています。逆に言うと、それだけ裁判で詐欺罪の成否を争う余地があることを意味しています。詐欺罪で疑いをかけられ詐欺罪の成否を争う場合は、はやめに弁護士に相談し、綿密な打ち合わせを行う必要があります。

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