殺人・殺人事件で逮捕されてしまった場合の罰則

殺人事件で逮捕・罰則コラム

殺人の罪に関する事件は多くの人の関心を集めやすく、かつ事件自体に社会的問題を内包していることが多いことから、よくニュースやネットなどでよく取り上げられやすい事件の一つでもあります。ここであえて「殺人の罪」と表現したのは、殺人の罪は皆さんがよくご存じの殺人罪だけではなく、これからご紹介する殺人予備罪なども含まれているからです。

今回はこの「殺人の罪」について詳しく解説します。

殺人の罪とは

人を殺す、という結果が発生した場合に問われる罪が「殺人の罪」です。もっとも、殺人の罪といってもその種類は多岐に渡り、殺人罪、殺人予備罪、自殺関与罪、同意殺人罪のほかそれぞれの罪についての未遂罪があります。

殺人罪と罰則

殺人罪は刑法199条に規定されています。

刑法199条

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

殺人罪が成立するには「人を殺す行為(実行行為)」、「人の死亡(結果)」、「実行行為と結果との間の因果関係」のほか「人を殺す意図(殺意)」が必要です。

実行行為には、ナイフで心臓を刺す・切る、首を絞めるなどの積極的な行為のほか食事を与えないなどの消極的な行為も含まれます。因果関係は、基本的にその行為がなければ結果が発生しなかったであろうという場合に認められると考えられています。殺意は人の内心にかかわる事情ですから、犯行に至るまでの経緯、犯行の計画性、犯行態様(武器使用の有無、実行行為の態様)、犯行時の言動、犯行後の経緯なども加味されて判断されます。

なお、人の死という結果は発生したものの殺意がない場合は傷害致死罪(刑法205条:3年以上の有期懲役)、過失致死罪(刑法210条:50万円以下の罰金)などに問われます。

殺人罪の罰則は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」です。

殺人予備罪と罰則

殺人予備罪は刑法201条に規定されています。

刑法201条

第199条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

殺人予備追が成立するには殺人罪(刑法199条)を犯す目的で「予備」をしたことが必要です。予備とは一定の犯罪を実行するための準備行為をいいます。犯罪が完成するまでには、通常、「決意→予備(準備)→未遂→実行」という経過をたどりますが、後でご説明する未遂よりもさらに前段階が予備です。殺人の目的でナイフを購入することが殺人予備の典型です。

なお、刑法では既遂犯を処罰するのを原則としており、未遂、予備を処罰するのはあくまで例外という位置づけです。したがって、未遂も予備も個別の罪において処罰する旨の規定が設けられていなければ処罰されることはありません(たとえば、窃盗罪(刑法235条)には未遂罪の規定はあります(刑法243条)が、予備罪の規定は設けられていません)。

殺人予備罪の罰則は「2年以下の懲役」です。

自殺関与罪、同意殺人罪と罰則

自殺関与罪と同意殺人罪は刑法202条に規定されています。

刑法202条

人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくは承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。

「~自殺させ、」までが自殺関与罪に関する規定です。これからすると、自殺関与罪の成立には「教唆OR幇助(実行行為)」、「人の自殺(結果)」が必要ということになります。

「教唆して自殺させる」とは、もとから自殺意思のない方に自殺の意思を決意させて自殺させること、「幇助して自殺させる」とは、自殺意思のある方の自殺を容易にすることをいいます。自殺は被害者の自由な意思に基づかなければなりませんから、被害者の自由な意思に基づかない死亡と認められる場合(例えば偽装心中など)は自殺関与罪ではなく殺人罪が成立する可能性があります。

「又は」以下が同意殺人罪に関する規定です。「嘱託」とは被害者から殺害を依頼されてこれに応じることをいい、「承諾」とは被害者から殺害することについての同意を得ることをいいます。嘱託・同意も被害者の自由な意思に基づくことが必要であり、これがない場合は殺人罪が成立する可能性があります。

自殺関与罪、同意殺人罪の罰則は「6月以上7年以下の懲役又は禁錮」です。

殺人の罪に関する未遂罪

殺人の罪に関する未遂罪は刑法203条に規定されています。

刑法203条

第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。

第199条が殺人罪、前条の罪が自殺関与罪、同意殺人罪の規定ですから、刑法203条は殺人罪、自殺関与罪、同意殺人罪に関する未遂罪の規定ということになります。

未遂とは、犯罪の実行に着手したものの、何らかの理由により犯罪の結果が発生しなかったことをいいます(刑法43条前段参照)。未遂には犯罪の実行に着手したもののその実行自体が終了していない着手未遂、実行自体は終了したが結果が発生しなかった実行未遂があります。また、結果が発生しなかった理由による区分として、自己の意思により犯罪の結果が発生しなかった中止未遂と自己の意思によらずに犯罪の結果が発生しなかった障害未遂があります。中止未遂は必ず刑が減軽されます(刑法43条後段)。

未遂罪の罰則は基準となる刑にならいますが(殺人罪であれば「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」)、量刑の上では既遂よりも軽くなるでしょう。

殺人の罪に問われたら弁護士に相談

殺人の罪は人の命を奪う重大犯罪であり、それゆえ他の犯罪に比べ刑が重たくなっています。起訴され裁判で有罪となれば極刑を科される可能性もありますから、弁護人による適切な刑事弁護を受けることは必要不可欠です。殺人の罪に問われたら弁護士にご相談ください。

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